さようなら、ありがとう花岡小学校
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閉校式当日。その日みんなは・・・。
朝、少し早く目が覚めたので、宿を出て少し散歩しました。昨日の夜は暗くてよく分からなかったのですが、長い一本道とどこまでも広がる大きな空が印象的。雪じゃなく雨がぱらついていて、冬の北海道らしくない朝です。支度をして朝ご飯を頂き、車で花岡小学校に向かいました。静かで広い鵡川の風景に見とれていました。そして久しぶりにやって来た花岡小学校。今日は前に来た時と違ってたくさんの車が止まっています。聞く所によると、上は90歳以上、下は小学1年生と250人の同窓生が集まるのだそうです。「おはようございます、はじめにきよしです。」皆さんに挨拶して学校の中に入って行きました。初めてお会いする方々がほとんどでしたが、何か親戚の家に遊びに来たように暖かく迎えてくれました。教室が僕達の控え室で、その扉の前にきて思わず顔がほころんでしまいました。子ども達がとても素敵な看板を作ってくれていたのです。中に入ってさらにびっくり!特大はじきよイラストやメッセージ、それはもう本当に心のこもった飾り付けをしてくれていました。スタッフ一同大喜び。ところで9人の子ども達はどこにいるのだろう?と廊下に出てみました。姿が見えません。と、その時、奥の体育館の方から「ドンドンドン〜」と太鼓の音が聞こえてきたのです。「あれはもしかして・・」と体育館に向かってみました。すると、いましたいました、久しぶり〜!今日の式で9人の子ども達は、花岡小学校史上最後の演奏になる和太鼓の演奏を披露してくれることになっていて、そのリハーサルをしていたのです。僕らの姿を見つけた子ども達はワーっと走りよって来てくれました。もうすっかり友達です。「自分の学校が無くなる」という事で、もっとしょんぼりしてしまっているのかな?と思っていた僕は、みんなの元気な顔をみてホッとしました。今日はこの後何かとみんな忙しいし、ゆっくりお話出来るかどうか分からないので、先生が僕達の為にしばらく時間を設けてくれました。僕らは教室の素敵な飾り付けのお礼を言いました。随分と時間がかかったそうですが、楽しかったよと言ってくれました。じゃあ、改めてはじきよに何か質問のある人〜!と訪ねたら、一年生のたくやくんが元気に「どうしてアイドルになったのですか〜?」と、叫んで(笑)くれました。・・ア・アイドルって。・・なんでやねん(笑)。
そうしていよいよ第一部の閉校式の時間がやってきました。僕らもスーツを来て出席です。まずは教育委員会の方や校長先生が「昨今の少子化の現状」や「花岡小と地域の関係」など、それぞれ花岡小との別れを惜しむお話をされました。その後しばらく役員の皆さんのお話が続きました。そして、壇上に9人の子ども達があがり、一列に並びました。しばし沈黙の後、一年生のたくやくんから一人ずつ順番に大きな声でスピーチを始めたのです。「なんで僕らの学校がなくなっちゃうの?寂しいよ。でも新しい学校でも友達たくさんつくってがんばります!」「花岡でしかできなかった楽しい思い出の数々」「本当はここで卒業したかった。ここのみんなは家族のようだ」「僕達がいなくなったらここはどうなっちゃうんだろう?取り壊されないでほしい。また皆で遊びにきたい」「おじいちゃんより年をとった花岡小学校、93年間ほんとうにご苦労様、そしてありがとう。あともう少しがんばってね」。あまりにもストレートな子ども達の気持ちでした。しかも何か紙を見て読んでいるのではなく、ちゃんと覚えてスピーチしているのです。マイクも使わず、会場に響き渡る大きな声でしっかりと・・・。会場のあちこちですすり泣く声が聞こえています。僕達の胸にも彼らの熱い想いが矢のように突き刺さってきました。最後はみんなで声を合わせ「新しい学校でもがんばります!」と力強い宣言。割れんばかりの拍手が会場を包み込みました。最後の校歌斉唱では、大切に包まれた遺影を出しておられる方の姿もありました。今は亡きおじいちゃんかおばあちゃんが卒業生だったのでしょうか。
その後、記念碑の除幕式が外で行われている間に、僕達は第2部の「惜別の会」での演奏の準備をしました。惜別の会は食事をしながらみんなで思い出を語り合うという、ざっくばらんな会です。 RISING SUN〜の時にもお世話になった札幌の音響屋さんが手際良くセッティングしてくれ、あっという間に準備が整いました。さあいよいよ惜別の会のスタートです。この会は第1部とは違ってとても賑やかで、楽しい雰囲気。しばし歓談&食事の後、いよいよ僕らのステージです。初めてはじきよの演奏を聴く方がほとんどだったと思いますが、とても暖かく聴いてくれていました。9人の子ども達はご飯を食べるのもそこそこに、一番前で三角座りをして聴いてくれています。僕はもう完全にみんなの顔は覚えましたよ。ギターとピアニカで『Spring Spring』・『備えあれば憂いなし』、のこぎりとピアノで『埴生の宿』『土の記憶』と続け、ギターとピアニカに戻り『あがりがまち』、みんなと出会うきっかけになった『子どもの不思議』、そしていよいよ花岡の皆さんにプレゼントした『みんなこども』を披露しました。子どもたちやM先生は昨年送ったCDを何度も聴いてくれていたらしく、一緒に口ずさんでくれていました。そして最後に、のこぎりとピアノで『まなびやとおく』。先程の子ども達の心打つスピーチや楽しい笑顔、自分のまなびやが無くなってしまったような切なく哀しい気持ちが込み上がってきて胸がつまってしまいました。目を閉じ、心を込めて演奏しました。のこぎりもピアノも別れを惜しんで泣いていました。そして花岡小学校の公式な場での最後の校歌の斉唱を、なんと僕らが伴奏することになったのです。三角座りしていた子ども達にも舞台に上がってもらい、会場全員で3番まである校歌を大合唱しました。花岡の皆さんにとって大切なこの曲を大切な場所、大切な時間に演奏させてもらっている事に胸がいっぱいになりました。僕たちの演奏のあと、いよいよクライマックスの子ども達の和太鼓の演奏です。この日の為に一生懸命練習した2曲を、力強く演奏してくれました。難しいキメも見事にこなし、またも会場は拍手の渦になりました。「とにかく素晴らしいね」この一言しか出てきませんでした。
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